本日、ひきこもりに関する学習会第4回を開催しました!
今年度最後、第4回の学習会はひきこもり経験者で現在は京都市で居場所を運営されている
田中靖子さんをお招きし、「今、生きている・・・当事者の物語を知る」というタイトルでお話をお伺いしました。
今回はひきこもり経験者に登壇いただくということで皆さんの関心が高く、
当事者ご家族を中心に行政、支援者や地域住民と定員いっぱいのご参加をいただきました。
田中靖子さんとは昨年のひきこもりVoiceSTATION全国キャラバンin京都の会場に
お越しいただいてから、このひきこもりに関する学習会にご参加いただくようになり
お顔を知るようになりました。
そして昨年秋に開催された京都府の支援者向けのひきこもり対応強化研修に登壇され、
その研修を乙訓もものスタッフが受講した際に、あまりの壮絶さに驚いたばかりでなく、
当事者の気持ちやひきこもり状態にあるとはどういった状態か、回復のきっかけ、
家族との関係性など、本当に生々しく、リアルに、しかも伝わりやすく話されていたので
これは乙訓地域の方々にも聞いていただきたいと思い、今回講師を依頼しました。
ただ、田中さんも登壇することに慣れていらっしゃるわけではないので、
こちらからお話を伺う形のインタビュー形式で、これまでの半生を話していただきました。
お話しいただいた内容の詳細はプライバシーがあるため、控えさせていただきますが、
まずは、お子さんの時のご様子をお伺いし、いじめを受けていた小学校時代や
中学・高校・大学の時について、お話しいただきました。
中学・高校は他者との関りがうまくできず、しんどさを抱えながらの日々だったそうです。
その後、介護が必要なおじい様と接していたこともあり福祉系の大学に進学され、
介護福祉士の資格を取得されたのですが、実習や卒論により過度のストレスから
摂食障害になってしまわれます。
それでも大学を卒業し、特別養護老人ホームに就職されます。
しかし。。。
高齢介護施設で働く理想と現実の差に苦しむ毎日を過ごされ、1年経たずに退職されます。
摂食障害、さらに自傷が始まり、夜中に寝言で謝っていることもあったそうです。
親も喜んでいたのに、自分はなんて情けないんだ。。。
自己否定感でいっぱいになった田中さんはひきこもり状態になってしまわれました。
入浴はせず、髪はボサボサで化粧もせず。。。
保清する意欲もなく、何もする気がまったく無い状態だったそうです。
摂食障害が親にわからなように、自室に食べ物を持ち込みビニール袋に吐いては
夜中にトイレに流しに行く毎日。
これを繰り返すことでの自己嫌悪がどんどん深まっていったそうです。
田中さんは当時のことを日記につけておられて、その日記を読んでくださいました。
まさに、壮絶な日々。
苦しみやしんどさが聴くものの体に突き刺さりながら伝わってきました。
当時を思い出し、涙を流しながら話す田中さんでしたが、
日記を読むことを止めようとはされませんでした。
しんどかったんだなぁ、本当に。でも、今生きているなぁと思っていたそうです。
しんどい渦中にいる時は助けてほしいという感情すらない。
自分を痛めつけることに全力集中。
自己否定感でいっぱいで、そうしないと生きていけなかった。
本当に重い当事者の言葉です。
そこから精神科の受診を繰り返したことや、ご家族と関係性についてお聞きしました。
そして厳格なお母様との関係が、ひょんな出来事から変わり始め、
田中さん自身のことを認め、話を聞いてくれるドクターの出会いがあり、
田中さんは回復への一歩を踏み出されていきます。
つながりから30歳でなんと、ショットバーのアルバイトを始め、
昼間はヘルパーとしても働きだしたことで生活リズムが整ってきたそうです。
この時、夜の仕事に就いたことでそのことをお父様が心配され、
田中さんに手紙を渡されたそうですが、田中さんは無性に腹が立ったそうです。
それは、やっと自分らしくいることができる場と出会い、外へ出て働いているのに!
という気持ちから。
親と子どもの思いはなかなか一致しないものですね。
このあたりは親子関係を気づいていく上では知ったおいた方が良いことですね。
そして、ショットバーのマスターとの出会いが大きかったそうです。
それは過去には介護職として働けなかったことや、いじめを受けてきた経験もあるのに、
ありのままの自分を受け入れてくれる、このままで必要としてもらえる、
そんなマスターの関わりに、自分の中の空洞が少しづつ満たされていったそうです。
それも、他者に満たされたのではなく、自分で満たしていくことができたそうです。
この、自分で内発的に自分の中の空洞を埋めるという表現はとても重要な気がします。
その後、ご結婚され今はご家庭を持たれ、京都市内で義父が運営されていた京都アルという居場所を週2回(プラス月2回土曜日)程度、1年ほど前から再開されました。
京都アルでは、メンバーにはこれから先のことは話さないそうです。
田中さんは、ただそこにいて、みんなと一緒に楽しんでいるだけ。
そうしていれば、準備したい時、行動したい時に、メンバーはそれを教えてくれる。
先や未来の話は、今が満たされていて、次に考えられること。
だから、今を自分らしく生きることが大切。
本人のタイミングを待ち、本人が準備ができるまで待つ。
そして、家族以外で見守ってくれる人が必要、と話されていました。
また、ちゃんとしないといけないという思いを持ちながら生きてきたことでしんどくなり、
ありのままの自分を受け入れてもらえ、そのままでもいいと思えたことで、
回復の道を歩み始めることができた田中さんは、ご自身の経験から本人たちを誰かや、
世間一般の普通とか常識と比べないでほしいともおっしゃっていました。
今は母親としての役割も持つ田中さんですが、親になって初めて、自分がしんどい時に
両親も両親なりに愛情を注いでくれていたことがわかったそうです。
そして、ひきこもり経験者だから子育てをよくわかっているなんてこともない、とも。
親御さんは愛しい子どもに自分なりに愛情を注いでいるし、
本人は自分がしんどいこと、人生がうまくいかないことを
親に理解してほしいと思っている。
誰も悪くないのに、この双方の思いが正面から出会い、つながることが難しいんですね。
そういった齟齬が生じることを理解した上で、本人を理解をしようとすることや、
そうする姿勢を持つことが支援者を始め、周囲の人に求められるのですね。
たくさんの質問に丁寧に答えてくださった田中さん。
当事者ご家族のご質問にも考えながら暖かくお返しになっていたのが印象的でした。
今日の田中さんのお話は、当事者はどう思っているのか、どのように感じているのか、
ひきこもり状態にあるとはどういった状態か、回復のきっかけ、家族との関係性や距離、
そして親になったからこそわかることなど、当事者と経験者と親という3つの目線から
お話しいただけたと感じており、これまで開催したひきこもりに関する学習会の内容が
全て凝縮され網羅されています。
それほど、学びの多い学習会でした。
よくぞ、辛い日々の日記を記録として残していてくださいました。
当事者の苦しい日々の記録があるからこそ、
私たちは当事者の思いや気持ち、状態を知ることができるのです。
感謝しかありません。
ご参加いただいた多くの皆様、ありがとうございました。
ご自身の経験を赤裸々にお話しくださった田中靖子さん、心から感謝申し上げます!
今後も経験者として、居場所運営者として連携をお願いいたします!
今年度最後、第4回のひきこもりに関する学習会は学び多く終了することができました!
ありがとうございました!
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