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執筆者の写真乙訓もも

ひきこもりに関する学習会第2回「ひきこもり状態にある若者がつながりたいのは、誰?」を開催しました。今までとは一味違う風向きの学習会でした!

7月4日火曜日に、今年度第2回目のひきこもりに関する学習会を開催いたしました!




ひきこもりに関する学習会第1回は家庭支援総合センターから廣田主査をお招きし、

「ひきこもり支援の基本と8050問題」というタイトルでご講演いただき、

ケースがなかなか動かずに支援者が頭を悩ませることが多い「8050問題」を

クローズアップし皆さんと一緒に学ぶ機会を設けました。


昨年11月の内閣府による調査ではひきこもり状態にある方が146万人に上り、

コロナ禍により不登校や若いひきこもり状態にある方が増加していると言われています。


実際、乙訓ももでも今年に入ってから20歳代の当事者家族からの相談が増えており、

その実態を日々強く感じ取っています。


そういった現状を踏まえ、第2回の学習会はひきこもり状態にある若者を取り上げ、

当事者たちが本当につながりたいと思っているのは誰で、どこなのか?ということに

ついて学びたいと考えました。


















今回、講師を依頼させていただいたのは大谷大学社会学部で生活に困難を経験している若者を対象としたソーシャルワークについて研究されている岡部茜先生で、そのような若者と

その課題について関心のある人たちが社会でよりよく暮らしていくための仕組みなどを

日々模索されており、滋賀県のひきこもり支援センターで相談支援に従事されていた

ご経験から現場や当事者の声を大切に扱われている方です。


岡部先生はいわゆる「ゆとり世代」 で、当事者であった岡部先生ご自身を含む若者たちが当時バッシングされたことで、果たしてこれは自分たちの責任なのだろうかと疑問を

持たれたことが若者を対象にしたソーシャルワークを研究するきっかけだったそうです。




そんな岡部先生が「ひきこもり状態にある若者がつながりたいのは誰か?」というタイトルでお話しくださったことは・・・





第2回目の学習会、岡部先生は上のようなサブタイトルでお話しくださいました。


まずは昨年11月に内閣府の「こども・若者の意識と生活に関する調査」の結果について

ご紹介くださり、ひとつの問いを投げかけられました。


それは、「調査するのは良いことなのか?」ということです。


ひきこもり状態にある方について全国的に実態調査が進んでいますが、当事者はこれにより「ひきこもっているという状態を調査され、支援につなげようとされてしまう」流れに

外部から侵され、「把握されてしまう」という恐怖を感じています。


自分のことを把握されてしまう恐怖・・・

これって、自分に置き換えても、ものすごく怖いことなんじゃないでしょうか?


調査によって当事者は恐怖に晒されてしまう、という側面もあるということなんですね。

ここで把握される、介入されることを避けようとする当事者のブログを紹介してくださいました。


そのブログはこちらです。


続いて、若者は日本の社会福祉の埒外、枠の外に存在しているということで、

若者は働くことができるし、彼らのことは家族が支えるべきだという仕組みが

若者や家族を追い詰めていると話され日本の社会保障に潜む問題について言及されました。


先生のご用意くださった上の図のようにOECDの多くの国は社会保障の仕組みが

4層であるのと比較し、日本は3層で、社会手当は家族や企業に委ねられてきたのです。


特に近年は核家族化などもあり、この構造ゆえに家族がどんどん追い詰められてしまう

構図が出来上がっているんです。


ひきこもり支援では家族で抱え込まないようにと伝えているのに、

社会保障制度は家族で支えるようにと言っている、この矛盾・・・


「ひきこもり状態」が問題化しやすい仕組みは社会保障の問題であると。

これはかなりインパクトのある学びでした。


次にひきこもり支援について、

ひきこもっている状態にある人の特徴としての「動けなさ」と、

何か変化を起こしていなければならない、という支援側の認識により、

当事者主体ではなく支援者主体で支援を行なってしまう恐れがあることを話されました。


何か変化を起こさなくちゃいけない、動かそうとする支援。

就労へつなげないと生きていけない、焦っているのはなぜか支援者。

なかなか動かないから、もう終結と判断!


これは本当に気をつけないといけないことで、日々、意識しながら、

分や秒単位で逡巡すべきことだと考えます。


ついつい支援者主体で考えてしまっているかも・・・と、猛省です。





この後、とても面白いキーワードを教えてくださったのですが、それは、

「ぼんやりとした主体性」というもので、何かへの主体的な決断は自然か?と

岡部先生は問題提議されました。


ですよね、我々は何事においても主体的な判断・決断を毎回毎回行っているわけではなく、なんとなくとか、流れの中で判断した、ということが大半ではないでしょうか?


なのに、ひきこもり当事者には常に主体的な判断を求める。

これって自然なことですか?ってことですよね。


そこには偶然から生まれる成りゆきを育てる文化が必要で、


誰/何を支援するのか? 支援者やソーシャルワーカーは「社会」を支援し、

誰が何を「早期発見」するのか?、それは本人が活動・相談先を発見するということ。


我々は当事者より社会にアプローチし、本人が主体的に動けるように

社会を整えていくということが必要ということですね。















また、コロナ禍で当事者はどのような経験をしたかをお伝えくださり、

地域とひきこもり状態にある若者というサブタイトルで、ひきこもり支援は政策的には、

身近な地域へ、という流れになっているが、当事者はどう考えているかを当事者の声を

中心にして教えてくださいました。


自分の生育歴やいわゆる黒歴史を知っている人が住んでいるのが地域であり地元です。

そのような場に出たいと思うでしょうか?

役所で同級生が働いているかもしれない、同級生が結婚して住んでいるかもしれない、

知られたくない自分を再認識させられてしまう・・・


「地域に出たい」と当事者は思うでしょうか?


これも自分に置き換えてみたら・・・


ここで広域的な支援の意義というものが見えてくるのですね。 


「地元」から離れて活動ができること、

生きていけると思えるコミュニティを新たに探せること。

どこで相談するか、どこの地域の活動に参加するかは強制されてはいけないと

岡部先生は強調されました。


ふだん、地域で支えると言って活動していますが、

この視点や当事者の声は絶対に無視してはいけないものです。


もちろん、すべての当事者が地域での支援を望まないわけではありません。

地域だからこそ安心できるという方もおられるでしょう。



だからこそ、



ということにつながるのですね。


地域、地元、非地元、遠方の地、どのような機関、社会資源など選ぶのはあくまで当事者で支援者あるいは他者は、バリエーションに富んだ場をいくつも作り、

それらの情報を当事者に届くように発信することが大切ということ。



今回、ひきこもり当事者の言葉・本音をしっかりとお伝えくださった上で、


日本の社会保障制度がひきこもりを問題化させやすくしていること。

当事者の実情と支援者の認識により、主体の置き場を間違えてしまう危険性。

判断する時の成り行きを育てるということ。

そして、地域、地元と声高に言うことでの当事者ニーズと乖離が危惧されること。

などなどをお話しくださり、

今までとは少し異なる風向きやテイストの学習会になりました。






その最たる内容がひきこもり状態にある人の中で働くことが難しい方もおられるという

現実がある中で、働いて所得を得る以外の方法も必要と話されたことです。


・家賃が高い ・食費がかかる ・医療費がかかるというのが今の日本社会で、

「このままじゃ生きていけないぞ」という恐怖を小さくすることが支援者に

求められており、自治体と民間が連携し住居を格安で提供する仕組みが始まっていたり、

支出を減らして生きていくという考えやライフスタイルもあることを披露してくださいました。


もう、これは、従来の価値観を壊して支援の場に立つ必要がりますね。


支援者はまず古い考えを捨て、

自分の価値観を壊しアップデートすることから始めなければならないのでしょう。

そして、情報をしっかり収集しニーズに合ったものを提案できること。


うー、大変そうですが、なんだかワクワクもしますね。




とても、とてもたくさんの大きな学びと気づきをいただいた今回の学習会。

それが実のあるものであったということは、40名に上る参加者のアンケート結果や

会の終了後に岡部先生と話されている参加者が多かったことで明らかです!


今年度第2回目のひきこもりに関する学習会

「ひきこもり状態にある若者がつながりたいのは、誰?」は

盛況のうちに無事終了することができました。
















学習会のぎりぎりまで熟慮いただき資料を作成してくださった岡部先生、

心から感謝申し上げます。


今回学ばせていただいた内容は今後のネットワークづくりにも

大いに参考にさせていただきます!


岡部先生、ありがとうございました!

ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました!


これからも乙訓地域でのひきこもり支援にお力添えをいただきますよう

お願い申し上げます。























岡部先生は学習会終了後に、拠点の駄菓子屋にも立ち寄ってくださいました!


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